2011 June : CAFC Alert

Microsoft Corp. v. i4i Limited Partnership et al.

| June 24, 2011

サマリー

米国最高裁判所は次のことを示した。特許侵害訴訟の被告が抗弁として特許無効を主張する場合、被告は、「clear and convincing evidence(明確且つ説得力のある証拠)」によって特許無効を立証しなければならない。

背景

特許権者i4i社は、コンピュータ文書の管理方法についての特許を所有していた。そして、i4i社はマイクロソフト社がその特許を故意侵害しているとして訴えていた。

マイクロソフト社の抗弁の一つは、当該特許を具現化した製品が米国特許の出願日よりも1年以上前に販売されていたことに基づく(所謂on sale bar)特許無効の主張であった。

当事者に争いのない事実は、米国特許の出願日よりも1年以上前に、本願の発明者を含む開発者によって開発されたS4というソフトウエアが、あるプロジェクトのために販売されていたということ;そのプロジェクト終了とともにS4のソースコードは廃棄され、そのソースコードは裁判時には現存しなかったこと;米国特許の審査官もそのソースコードについては、特許性判断の際に検討していないということである。

マイクロソフト社は、S4は、本願特許のクレームを具現化したものであると主張していたが、一方、i4iは、開発者のデポジション証言に基づいてそれを否定している点で争いがあった。

その結果、地裁は、マイクロソフト社の侵害を認定するとともに、マイクロソフトはon sale barによる特許無効を「明確且つ説得力のある証拠」によって立証できなかったとして、マイクロソフト社の特許無効の主張を退けた。CAFCも、特許法282条の長年の解釈に依拠して、地裁判決を支持した。そして、マイクロソフトは、最高裁にアピールしたのである。

特許法282条では、「presumed valid(特許は有効とみなす)」という文言があるが、その立証基準については明示されていない。そこで、マイクロソフトは、被告による特許無効の立証基準は、「clear and convincing evidence(明確且つ説得力のある証拠)」ではなく、より低い基準である「preponderance of evidence(どちらの証拠に優越性があるか。すなわち、そうである証拠が、そうでない証拠よりも優越しているということを示せばよい)」により判断されるべきであるとして争った


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Boston Scientific Corp. v. Johnson & Johnson, Cordis Corp. and Wyeth, Fed. Cir. June 7, 2011

| June 15, 2011

Majority:  Moore, Bryson

概要

化学構造と機能性の相互関係についての記載がなく、化合物の大きな属を記載したクレームは、記載要件を満たしていないと見なされる。出願時、どの属に機能性があり、どの属に機能性がないかについての情報がなく、当該分野において不確実性が存在し、当業者がクレーム発明の範囲を理解することができないような場合は特にそのように見なされる。

出願手続きについてのアドバイス

–          特許請求の範囲は、広いものから狭いものまで含むことを推奨する。可能であれば、大きな属から特定の種のみならず、属と種の間の特定した化学構造を表す下位属も記載することを推奨する。

–          発明について何らかの不確実性が存在する場合、その不確実性について明細書に記載すべきでない。本件では、発明のある面について「現在調査進行中(under active investigation)」と示した特許権者のコメントは、化学構造と機能の相互関係について当該分野において公知であったという主張と矛盾していた。専門家証言も、同じ結果(当該分野において公知であった)になるかもしれないが、明細書にそれと矛盾する記載があった場合、裁判所が特許権者に有利な判決を下すことは難しくなる。


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CAFC CREATES NEW INEQUITABLE CONDUCT STANDARD IN THERASENSE V. BECTON, DICKINSON

| June 3, 2011

要約

CAFC大法廷は、特許プロセキューションにおける出願人の不公正行為の認定についての新基準を示した。すなわち、CAFCは、非開示情報が重要(materiality)であるかどうかについて、従前よりも高い基準のbut-for testを採用するとともに、欺瞞の意図(intent to deceive)の立証については従来レベルの高い立証基準を維持した。また重要性(materiality)と欺瞞の意図(intent to deceive)は、それぞれ別個の立証が必要であると改めて示した。さらに、所謂「sliding scale」により、materialityもしくはintent to deceiveの一方が非常に強い場合には他方が弱くても不公正行為を認める認定方法を否定した。

but-for testの下で出願人がIDSに基づく不公正行為を立証するには、明確且つ説得力ある証拠でもって、次の事項を立証しなければなばならない:

          (1)     出願人がその情報を知っていたこと、

          (2)     その情報が重要であること、そして

          (3)     出願人が故意にその情報を開示しないと決定したこと。

重要性

非開示情報が重要(material)であるかどうかに関して、CAFCは、原則、but-for testを採用した。すなわち、この新基準によると、もしも非開示の情報を特許庁が知っていたら、特許庁がクレームを許可しなかったであろう場合に、その情報が重要情報となる。このbut-for test、すなわち、非開示情報があれば特許庁がクレームを許可しなかったかどうかを判断するに際しては、地裁は、特許庁の審査における基準と同じくpreponderance of evidence (証拠の優越性、すなわち、51%の確かさがあること)の立証基準で、合理的で最も広いクレーム解釈に基づいてその判断を行うべきである。したがって、今後は、特許有効性はPhillips判決に従い明確かつ説得力ある証拠(clear and convincing evidence)に基づいて判断されるため、非開示情報で特許が無効にならない場合であっても、その非開示情報が不公正行為の認定に関しては重要(material)であると判断される場合があるかもしれない。


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